waltz

A shuddering wolf lay. "He got shot." Mimi said.

収斂する茎

伝えたいことを正確に伝えることはできない。
なぜなら、言葉や記号がプロトコルに沿っているものだとしても、わたしとあなたが違うものだから。
電気信号が同じでも、使っている電話機が違うのだ。

それでもあとすこし、もうすこしの正確さを求めるなら、同じ電話機を使うこと。
すなわち、一部だけでいい、あなたがわたしになるか、わたしがあなたになるかすればいい。
伝えるということは本来そういうことだ。
あなたの金型をわたしに鋳たり、わたしの記憶をあなたにコピーしたりすることだ。
それが正確かどうかの保証は誰にもできないし、正確性を欠くということが重要だったりもする。多様性ってやつ。

有史以来。式であらわせるような単純な、反復的な数学のような記号はかなりの正確さをもって伝えられてきた。
ばらばらな主観を組み合わせて大きな主観、つまり世界観を構築するのにそれらは使われた。
誰が? わたしたちのなかのそれ、それ自体に名前はない。
人びとの間に生と死と分断があり、記号と孤独をもって間隙を埋める。連綿と、延々と続く作業。気が遠くなるようなおぞましい行い。死体の山で築かれた清潔な聖域。神の主観。天国への道のり。
人間性。その言葉が一番近い。
人間の特徴。性。
犬がわんと鳴くのと同じ。鳳仙花の種が弾けるのと同じ。人間は孤独だ。孤独であるのが人間という生き物だ。他にも同じような特徴の生き物はいるけどね。

さて、桜が美しいのはなぜかという話だったかな。